2025.04.17
当研究所の定例行事であります標記研修会を、今年度は「WEBセミナー方式」で開催いたします。
今回の研修会では、文化財分野における虫・カビの調査をはじめ、IPMを取り入れた虫菌害防除対策の事例についての講義、さらに、先般文化財用燻蒸剤として広く使用されてきた殺虫殺菌処理剤「エキヒュームS」が令和7年3月末で製造終了となったことを受け、今後の生物被害防除を改めて考えていただくための講義を、各専門分野の先生方をお招きしお話いただきます。
文化財IPM は今後の資料保存管理を担う重要な生物被害対策の一つです。資料保存に関わる方々、また各収蔵施設において生物被害防除に携わる方々など、多くの方々にご参加いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
時期配信期間 令和7年7月1日から31日まで
対象① 一般の文化財保存管理者をはじめ、博物館・美術館・図書館・資料館・文書館等において展示・収蔵品や資料等を保存管理する担当者、またその施設で生物被害防除業務に携わる方
②「文化財IPMコーディネータ」有資格者で有効期限前の2年以内に開催する研修会等を受講する必要のある方
申込期間令和7年5月15日から6月20日まで
ただし、申込者が定員に達した場合は、期限前でも締切らせていただきます。
定員200名
受講料28,000円
ただし、当研究所維持会員※の方は、25,000 円 です。
振込先 次のいずれかの銀行口座へ、6月20日までにお振込みください。振込人欄の前には必ず「521」と記入してください。
例)文化太郎:521ブンカタロウ (株)文化: 521カ)ブンカ
① 三菱UFJ銀行 新宿支店 普通 0194785
② ゆうちょ銀行 〇一九店 当座 0060430
口座名義 公益財団法人文化財虫菌害研究所 インボイス番号 T3011105004634
なお、郵便局の「払込取扱票」を利用する場合は、次の番号へお願いします。
00130-9-60430 口座名義 公益財団法人文化財虫菌害研究所
振り込みにかかる手数料はご負担ください。また、一度納入された受講料は原則として返却いたしません。受講料の支払いに際し請求書等作成の依頼は、お申込みフォームの「通信欄」をご利用ください。
※ 維持会員とは、当研究所の活動を賛助し会費を納めている個人または団体(団体所属の役職員も含む)です。「文化財虫菌害防除作業主任者」および「文化財IPMコーディネータ」資格保有者は維持会員には該当しませんので、ご承知おきください。
視聴のための「ユーザーID」と「パスワード」は、6月23日にメールで送信します。
「ユーザーID」と「パスワード」は、「bck-seminar@bunchuken.or.jp」から送信されます。
メールの受信拒否設定をされている方はこのメールアドレスからの受信ができるよう設定してください。
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■今後の資料保存のための生物被害防除の考え方
東京文化財研究所保存科学研究センター 生物科学研究室長 佐藤 嘉則
資料保存における生物被害対策では,大規模にカビが発生した場合や害虫の繁殖が制御できなくなった際にガス燻蒸薬剤を用いて虫菌害を初期化する対策が図られてきました。近年、この燻蒸ガスを取り巻く状況に大きな変化が生じています。本講義では、燻蒸ガスの潜在的な問題についての整理を試み、この先の持続可能な生物被害防除について最近の取組を紹介します。
■エキヒュームS販売終了後の殺虫殺菌処理に係わる注意点
公益財団法人文化財虫菌害研究所 研究員 岩田 泰幸
「エキヒュームS」の販売終了を受け、今後の殺虫殺菌処理や有害生物対策の再考が求められています。防除方法を選択する際どういった点に留意すべきかについて、代表的な方法において例示しました。充分な検討がなく手法の選択を行うと、効果が得られないだけではなく、事故の原因ともなります。本講義を注意事項の整理や見識を広げるための機会としてご活用ください。
■ゼロから始める文化財IPM-昆虫の同定―
龍谷大学大学院 文学研究科 阿部 智裕
文化財IPMに基づいた虫害対策では昆虫同定の能力が求められます。一方で、昆虫の専門家ではない方々が適切に昆虫同定を行うのには困難も多いです。本講義では、昆虫の知識に乏しかった講演者が、昆虫同定に取り組む中で直面した課題とその解決策から重要であると感じた事柄を整理し、文化財保存分野における昆虫同定のポイントや注意点を示す。
■博物館におけるATP測定の活用とその特徴
国立文化財機構文化財活用センター 保存担当主任研究員 間渕 創
博物館において殺菌燻蒸剤の使用が難しくなった現在、少なくとも当面の対応としては、IPMによるカビ対策を強化・厳格化する以外に方法がないのが現状です。カビの発生を防ぐための温湿度管理に加え、環境中のカビの実態を調査・把握することが重要となります。本講義では、付着菌測定のうち近年博物館で導入され始めているATP測定について、その調査方法や注意点などを解説します。
■ニュウハクシミへの対策を含む北海道博物館におけるIPMの取組
北海道博物館 学芸員 高橋 佳久
当館では、昨今日本各地のミュージアムで存在が確認されているニュウハクシミへの独自の対策方法を検討・実践しています。
また、北海道では数少ない文化財保存科学担当学芸員を擁するミュージアムとして、他の専門分野の同僚学芸員との合意形成の仕方についても日々試行錯誤しています。
今回は、これらを含めた積雪寒冷地のミュージアムにおけるIPMの実践事例と考え方をご紹介します。
■埼玉県立歴史と民俗の博物館における総合的有害生物管理(IPM)について
埼玉県立歴史と民俗の博物館 資料調査・活用担当 濱田 翠
埼玉県立歴史と民俗の博物館では平成13年から総合的有害生物管理(IPM)を取り入れ、資料の保存管理を行っています。当館のIPMでは主に資料の定期清掃や点検を行っており、その取組みは全職員が参加できるように体制を整えています。その他にも有害生物生息状況調査や温湿度のモニタリング等を実施し、日頃資料の保存管理に努めています。
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