■書籍のカビの処理「殺虫・殺菌処理編」
小さな書棚一つ分くらいなら、クリーニング作業を施設の職員で行えるかもしれませんが、書庫まるまる一つ分になると、能力的(作業・器材等)にも時間的・人員的にも無理が生じます。
カビ払いやカビの殺菌・クリーニングをする作業は片手間にできる仕事ではありません。
カビ払いとクリーニングは書庫の管理者が手分けして行うこともできますが、専門の事業者に依頼することも選択肢の一つです。殺虫・殺菌処理など薬剤を使用(燻蒸処理)する処理は専門の技術者に依頼しましょう。
殺虫・殺菌処理は、文虫研の仕様のとおりに作業を行えば、処理空間内にいる害虫やカビを“0レベル”にすることができます。しかし、処理が終わったすぐ後から効果は下がり始めます。なぜなら文虫研で認定している文化財用の殺虫や殺菌処理用のガスは即効性(すぐに効く)があるが、残効性(薬剤の効果が処理後も残る)が無いタイプだからです。理由としては、処理をした薬剤が長い間、対象物(書籍・資料・展示物等)や管理者・従業員に触れ続けてしまうことによる「薬害」が起こらないことを第一に考えた薬剤だからです。燻蒸ガスによる殺虫・殺菌処理が終わり、ガスが完全に抜けた時に以前(開けっ放し・入れっぱなし・閉めっぱなし)からの保存環境が変わっていなければ、またすぐに元の虫やカビがたくさんいる書庫に戻ってしまいます。
燻蒸ガスによる処理を行った後は、今まで以上に温度や湿度の管理に注意し、害虫やカビの発生しにくい環境を維持していくことが大切です。