文化財IPM 何でも質問箱

「展示室で虫が捕れた!」

 先日、電話で相談がありました。展示のガラスケースの中で虫が捕獲され、びっくりした様子での一報でした。
 さて、まずは何をしたらいいでしょうか。すぐに防除等の会社に連絡をするのも一案ですが、まず最初に捕獲した虫の種類を事典などで調べてみてください。その虫は何を食べ、何に被害を及ぼしたか状況を確認することが大切です。偶然舞い込んでしまった蚊などの飛翔昆虫なのか、羊毛・紙・木材等の展示資料を食べて発生した文化財害虫なのかを整理することによって対応が異なってきます。
 虫の種類がわからない場合は、防除をしている会社や文化財虫菌害研究所に「同定検査(種類の判定)」を依頼することもできます。
 虫の名前がわかる場合は、展示ケースの中でその虫の餌となる対象を見つけ、懐中電灯や虫眼鏡などでじっくりと観察し、虫がいないか、糞が落ちていないか、抜け殻が落ちていないか、穴が開いていないか、糸でつづられていないかなどよく見てください。展示ケース内の床面、四隅、ケース内の照明部分も要チェック箇所です。もし、虫や痕跡が発見されたら、発生していた展示物を隔離し、前室の様なところで展示物の被害の確認とクリーニングをします。材質等に影響のない薬剤で処理をすることも方法のひとつです。また、展示ケース内から取り出すことができない場合は、ケース内に殺虫・防除効果のある蒸散剤を設置(文化財虫菌害研究所の認定薬剤もあります)する方法もあります。糞や死骸、抜け殻等は綺麗に掃除をして二次発生を防ぐことも重要です。
 後は、温度湿度・侵入経路(隙間)などの改善することはないか点検します。定期的な確認・清掃と薬剤の交換により良い展示ができると思います。